お隣さん

お隣さん

キャッシュレス国家
「中国新経済」の光と影
西村友作(文春文庫)

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 きっかけは、近所の花屋さんと、温泉宿の焼き鳥屋さんで「PayPay」のステッカーをみかけたことです。

 クレジットカードを使えるはずもないお店で、スマホ決済がすでに使えるようになってる。

 ちょっと調べれて、お隣さん・中国がキャッシュレスで進んでいて、日本がそれを追いかけていることはすぐにわかりましたが、その進化を大きな視点で説明した文章はwebでは見つからず、この本にたどり着きました。

 ポケベル→携帯→クレジットカード→メール→Tポイント→スイカ→SNS… などなど、今まで肉体と人間同士のコミュニケーションで生きてきた私達が、この20年でデータでつながる新しい社会的動物に変化してきたわけです。

 この本によれば、

 中国ではそれらに加えて、「お金を使う」ことが、その人物の信用情報とともに、データでつながるように急速に進化している。

 決済がデータになったことで便利で安心なサービスが次々と生まれ、中国政府が「誠実で信義を重んじる社会的気風が醸成されていない」(2014年)と自分で言わざるを得なかった、性悪説にもとづく世の中の様子も変化しつつある、

ようです。

 

 人間がデータでつながるようになったことで、
個人的な深い洞察や発見が阻害されるようになったと感じますし、何より自分が経験することが、自分のことを知っているデータの塊に左右されているようで気持ち悪い。

 たけど、瞬時にコミュニケーションが成立することで、多くの思考がつながって1つの頭脳のようにはたらく感覚も、また持てるようになったのも事実です。

 この本を読んで、中国全体が、
特に「中国新経済」をフル活用する1990年台生まれの人たちが、「強い意思を持った1つの生命」に進化する、という感覚を持ちました。10年後、いや5年後の中国の姿はどんなものになっているんだろう。

 

 中高生にぜひ読んでほしい、と言いたいところですが、ちょっと読むのは大変そう。(ぜひ、漫画にして子供向けに読みやすくしてあげてください! 1970年台生まれの我々が、アメリカのコンピューター産業のニュースを知って、ワクワクしたのと同じように、2019年の10代もお隣さん中国のリアルを知ってワクワクできるはず。)

 少なくとも、将来を真剣に考える大学生のみなさんにはぜひ読んでほしいと思いました。文章全体が、客観的なデータや視点にもとづいてシンプルに書かれており、日本にいたら体感できないリアルを仮想体験し、思考が深まるからです。

 一方で、主観的で自伝的なあとがきも心に残ります。

 留学中、中国人の友人に連れられて潜り込んだ講義で見た光景は衝撃的だった。同世代の中国人が、少しでも前に座ろうと「席取り合戦」を繰り広げ、講義終了後は、教授を取り囲んで質問攻めにしていた。本屋や図書館に行くと、お金がなくて文献が買えない中国人たちが、すべてを暗記してやろうという勢いで文献にかじりついていた。

 中国人の「智」に対するどん欲さを見て興奮を覚えると同時に、「教育」の重要さを改めて実感した。深センと北京の二度の留学で出会った「中国」と「教育」という2つのキーワードが重なり、「中国で博士号を取得し大学教師となる」という人生の目標が見つかった。

 

うん、なんだかすごく、勉強したくなったぞ!

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